百々目鬼怪談文庫2

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2021年4月ーーーー闇市にて、ワクチンの販売を牛耳る闇の勢力、「オメガ」。対して、寺院にて、無料でオマジナイを感染者に施すシグマ49の活躍を描く物語。 新たな変異体は驚く事なかれ、宿主が他の生物を捕食する事により、その遺伝情報を取り込み姿を変化させるクリーチャー「ドリーマー」となってしまうのだ。宿主は眠っている状態にあり、次にいつ目覚めて更なる進化を遂げるか不明だ。我々はそれを阻止せねばならない。阻止するには、変異ウイルスを淘汰するためにワクチンを投与するか、オマジナイを施して、ウイルスを除去するか。どちらにせよウイルスを保菌したままにはしておけない。 # 2021年4月ーーーー 横浜の闇市に国の団体がオメガ殲滅のために供給しようと、コンテナで運搬中のワクチン。そのトレーラーの横っ腹に体当たりするダンプカーがあった。轟音を立てて転倒するトレーラー。荷台が開くと、中から現れたのは、オメガの戦闘員 「既にトレーラーは乗っ取られている!ダンプカーから飛び移ったんだ!」 その声は転倒したトレーラーが突っ込んだ闇市のラーメン屋店舗から上がった。叫んだのは、中年のツンツンヘアのオヤジ、名は田所光央(たどころみつお)と云う。 「おいちゃん、豚骨ラーメンもう一丁」 注文したのは、最近、関東の方で活躍しているシグマ49とか云うアイドルグループのセンターを勤める少女、斑鳩月歌(いかるがつきか)の声だ。 少女はラーメン屋の主人が投げて寄越した豚骨ラーメンの丼を足で受けると、オメガの戦闘員の頭に逆さにして覆い被せた。 「熱い熱い!」 戦闘員は悲鳴を上げ店の軒先を転げ回る。 「観念しなさい昆虫人間」 月歌は、戦闘員の頭から伸びる触覚を摘まんで笑った。 「あんた、何食べたのお?」 摘まんだ触覚は黒い。そし艶々としている。 「ひょっとして、ゴキブ…」 「闇市で、食べる物が手に入らなくて…。オメガの戦闘員にまで身を落としたんです。でも結局、ラーメン屋の何だか分からないメニューしか食べる物はなくて… 」 「まだ食糧難は解決してないのね…」 月歌はゴキブリの触覚を見てウェと口を覆った。 「あんた、食中毒にならないように、一応、オマジナイやっといてあげる」 月歌の後ろから姿を現したのは萌香、シグマ一のオマジナイのエキスパートだ。 萌香が手を翳してオマジナイをしようと近づくと、戦闘員が掴み掛かった。 「油断したな!」 「しまった」 しかし、田所が間に割って入ると、手にしたショットガンで戦闘員の腹を撃った。白く粘液質の虫の体液が溢れだす。「うええええええ」月歌と萌香が嘔吐する。 横浜の闇市に国の団体がオメガ殲滅のために供給しようと、コンテナで運搬中のワクチン。そのトレーラーの横っ腹に体当たりするダンプカーがあった。轟音を立てて転倒するトレーラー。荷台が開くと、中から現れたのは、オメガの戦闘員 「既にトレーラーは乗っ取られている!ダンプカーから飛び移ったんだ!」 その声は転倒したトレーラーが突っ込んだ闇市のラーメン屋店舗から上がった。叫んだのは、中年のツンツンヘアのオヤジ、名は田所光央(たどころみつお)と云う。 「おいちゃん、豚骨ラーメンもう一丁」 注文したのは、最近、関東の方で活躍しているシグマ49とか云うアイドルグループのセンターを勤める少女、斑鳩月歌(いかるがつきか)の声だ。 少女はラーメン屋の主人が投げて寄越した豚骨ラーメンの丼を足で受けると、オメガの戦闘員の頭に逆さにして覆い被せた。 「熱い熱い!」 戦闘員は悲鳴を上げ店の軒先を転げ回る。 「観念しなさい昆虫人間」 月歌は、戦闘員の頭から伸びる触覚を摘まんで笑った。 何?おっちゃんが豚たま言うのはおかしい?それはお好み焼きのネーミングや?じゃ、ナンテ呼ばれたらええねん、ゴキたま?なんやゴキブリ入りのお好み焼きみたいやなあ、そもそもゴキブリ入りのラーメンを食うたんやないんか?やて?そーや、食べるモンなくて食ったのがそれやった。文句あるかい?何でんなモン食うのかて?世界は荒廃して食糧難の真っ最中、ゴキブリ入りラーメンでも何でも食わなアカンねん! 「あー痛かったあ、、、見た目が痛そうやろ?白い液出てもうてなあ。しっかしホンマに不死身になっとるとはなあ、、、。あっこの横浜のオシャレショップから流れて来る梶浦よう子の曲のお陰やあ、ショットガンで撃たれても無痛症で痛くもないし、白い液が出ただけやんかあ。ホンマ助かったで」 バキイ 「あああああああああ誰やあああああああ!ワシのドタマ斧で割りよったんわああ」 カサカサカサカサカサカサ 「ああああああ頭蓋骨からゴキブリ溢れだしてきてまうやんかああ!」 ヤバいなあ、おっちゃんホンマヤバいわあ。 細胞分裂起こっとる。ゴキブリの細胞分裂や。ウイルスの特性が逆流してるよ? ウイルスの如く分裂はするし、レトロウイルスの如く遺伝子情報は組み込ませられるし、ウイルスの如くワクチンで死ぬかもしれへん。 「えっへへへへ?わし、ワクチンで死ぬんかあ?」 「ゴキブリおじさん、自棄にあっさり殺られてもうたなあ、もう終わりか?」 ぬはああああああああ 俺様はそう簡単には引き下がらんぞおおお 「まさか、また白い粘液で攻撃してくる気!?」 黄色い粘液で攻撃してやる! たん、ぺっ、たん、ぺっ。 「きゃああああああ」 たんの次はたんぱく質攻撃だああああ粘液粘液粘液粘液。 「嫌ああああ。ベトベトして気持ち悪いいいいいい」 さあ、どーする、シグマとか名乗っちょる娘共おおおお 「こらああ!そこのゴキブリおじさん!」 なんや、自分等。 「白い粘液を公共の場にドバドバ撒き散らすんじゃありません!」 土手っ腹に大穴開いてまってるのやからしょうがないやんけ、ショットガンで撃たれたのやからしょうがないやんけ。 「ええい、言い訳が多い!男が、、、ゴキブリの雄が、なんと女々しい事なの!」 確かに雌やないわ、こないに白い粘液出てもうてるしなあ。ニヤア 「まあ、なんて下品な冗談、お星様に変わってお仕置きよ!ショットガン!ショットガン!ショットガン!」 ズガンズガンズガン ぎゃあああああああああああ 「もしもし、こちら月歌です、本部、応答願いますますぅ。 (あ~こちらラーメン屋田所ぉ。ナニ~?) 「敵、戦闘員と遭遇中、応援お願いいたします」 (豚骨ラーメン一丁ね、了解~) 「田所ラーメン店じゃ駄目ね、梶浦学園、応答願いますます」 (あら、月歌ちゃん?えっ?応援?菫ちゃんを派遣するわ) 「菫ちゃんが来るの?!ふう、もう安心ね、、、、」 ほな、こっちも応援や!ミミズ親父カモーン! 恐怖、ミミズ親父!! 呼ばれて疎まれてババババアアアン 妖怪ミミズ親父デヤンスゥ!!! 「おお、ミミズ親父、漸く来たか!待ちかねたぞ!相変わらずミミズの内臓は元気か!!?」 これっすか?! 内臓っすか?! ミミズ親父と呼ばれるオッサンは片手の鉈で、突然腹を裂いた。 吹き出る血潮と内臓。 その内臓はウネウネと蠢き脈打ち、躍動している。 きゃあああああんた何なの!?キッモチワルイわねええ!! アマビエ団の少女達が悲鳴を上げる。 うどん屋でうどん食べたらこうなりましたああ。 うどんって、一体何が入ったうどん出す店なのよ! 所謂ミミズうどんでっか? 都市伝説にあるでしょ? 眼の悪いお婆さんを介護する悪い嫁が、お婆さんに「お婆ちゃん、今日の御飯はうどんですよ」って言ってミミズを食わせる心暖まるお話し。わいも、相方がゴキブリラーメン食わされた店でうどん注文したら、妙にヌメヌメしたうどん食わされて気付いたら、内臓や血管がこんな風にメタモルフォーゼしちゃってたのよねん。 食糧難に成ってから、こう云う訳の判らない奴が増えたわ、如何なものかしら。 映画のザ・フライの如く何か変な物と融合した奴がね。 わい等は一種の合成妖怪やな…。 おーいゴキブリオヤジ~、あのガキ共をやっつけようぜえ。 おいっす。ほな、チャチャっと始末するか、、、、。おうぇヴぉヴぇううぇ!!! ミミズ親父の内臓が、ゴキブリオヤジの片目を突いて飲み込む。 おおうぇ、()美味(うま)、眼球美味しいよ~ 目玉のオジヤって知ってるう?それはそれは美味しいらしいぜい!! おい、ミミズ親父、駄洒落かよ? 目玉を食われたゴキブリオヤジが、空かさず突っ込みを入れた。 駄洒落を言うのは誰じゃああああ、この口じゃあああ。腹から伸びたミミズの内臓が口に入って舌を飲み込む。 共食いとは良く言うけど、自己食いとは言わんなあ。 そう言う間にも、ゴキブリオヤジの溢れた白い粘液を、ミミズ親父の腹から伸びたミミズの内臓が吸飲する。 「あんなのに殺られる訳にはいけないし、殺られたくないわ」 千代子さんが言った。 どう戦いますか? この螢石を使いましょう。 「それは…何ですか?」 「ペグマタイトの一つよ。内部に放射能を蓄えた溶岩の宝石とでも言おうかしら。 これの内部から視線(ルート)を使って放射能を抽出するの、其れを敵にぶつけるのよ」 「こうですかあ?」 月歌が早速やってみせる。螢石からオレンジ色の光が伸びて消えた。 月歌ちゃんさすが、才能のある子ね。 脳が粒子を受けた時、どう反応するのか、また粒子を逆にコントロール出来はしないかーーー。 脳の機関部に粒子を照射して学習させて、付随反応を研究している。 それによって照射する粒子を選択する。 或いはーーー、照射する粒子によっては脳が見せる第六のセンス ーーーシックスセンスをコントロール可能だ。 君達斑鳩一族の脳内で起こっている、粒子への反応と、付随効果。 この「病を回復させる効果」をコントロール可能となれば、それは、万能のワクチンにも成りうる可能性すらある。 免疫力のコントロールに先立つ君達の能力は、パンデミックの今、必要とされているのかもしれない。 冬ーーしたいね。 あたし達斑鳩一族が2月になると使う言葉だ。 冬をする、とは具体的にどういう意味なのか。それは、水浴びにアイスクリームに寒中水泳にと、一般的に苦行と云われる様な行いを進んで楽しむ事を言うのだった。 ーーーその日は気温が4度しかなくてね、しかも土砂降りだった。でも月渚先輩はカッパも着ずにびしょ濡れになって自転車で走り回っても、風邪一つ引かなかったって。私なんか、2月にお風呂で水浴びしてるよ?水浴びすると暖まるよね、寒い日には、あれが一番だよー。        ある斑鳩一族の会話でした。 恐るべき抵抗力と免疫力。君達が不死身と云われ被験者に選ばれた理由だーーー。 更に、斑鳩一族が寒さに強い理由として挙げられるのが、体表を(オーラ)の様なもので包んでいるからーーーと云う物が挙げられる。 斑鳩一族は、視線でーー文字通り眼球の動きによって空中に(ルート)を描き、其処に瞬きする事によって照射される熱源(粒子?)を乗せる事が可能だ。描いた視線(ルート)に指を充てると、熱源を温度で感じる事も可能である。熱源の正体は粒子か、ーーーまたは未知の何かか。どちらにせよ、斑鳩一族はこの熱源に身体を包まれていて、極度に寒さに強いのだ。また、この熱源は、身体の至近距離に滞空させた場合、口腔から吸飲を可能とし、吸飲者は一時的に麻酔を吸飲した様な状態となる。これは、斑鳩月渚が、無痛症となった理由だと思われる。 この滞空する粒子は、指先からだして煙草の様に吸飲する嗜好もある。指先に力を込めると、自然に出てくると云う。 地誌『摂津名所図会』によると、鵺退治は以下のように述べられてる。平安時代、近衛天皇の住む御所・清涼殿に黒煙と共に不気味な鳴き声が響き渡り、二条天皇がこれに恐怖していた。遂には病の身となってしまい、薬や祈祷も効果はなかった。そこで、かつて源義家が弓を鳴らして怪事をやませた前例に倣い、源頼政に怪物退治を命じた。頼政はある夜、先祖の源頼光より受け継いだ弓を手にし怪物退治に出向いた。清涼殿を不気味な黒煙が覆い始めたので、山鳥の尾で作った尖り矢を射ると、悲鳴と共に鵺が二条城の北方あたりに落下した為、とどめを刺した。化物の姿は、『平家物語』などによると、猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇。これより天皇の体調もたちまちにして回復したと云う。 鵺とは、夜の鳥、夜の如く真っ黒な鴉と解釈して八咫烏。或いは、八咫烏から賀茂氏を連想させはしないか。鵺は鴨氏ですか…。月渚君を粒子が見える人物に後ろから見せると、指先から粒子が伸びる様に、尾てい骨から粒子が伸びているそうだ。それは尻尾に見えないか? 蛇の尻尾の正体ですか? 清涼殿を覆う黒雲は、君達が梶浦山の尾根に見たガスの如きモノだろう。 頼政の奥さんはあやめと云い、伊豆半島は賀茂郡にある長岡の西側の、古奈の辺りの出身だった。 古奈と云えば、文庫瑠璃の祖父の出身地の漁村もある。 頼政の奥さんは賀茂一族だった。しかも、人形供養の淡島神を信仰する、住吉神の権属の一族ツチグモではないのか?住吉の権属とするのは、淡島神が住吉神の奥さんだからだ。 賀茂郡にツチグモが住んで居たのは、安倍晴明の子孫のツチグモ一族ならごく自然な事だろう。 私達ツチグモ一族は鴨一族でもあり、(ぬえ)一族でもあるのか…。 尾てい骨から尻尾の如く粒子が伸びているからと言って、即鵺だとするのは安易だろう。 君達術師の一族は得体の知れない技を使うが故に様々な渾名で呼ばれて来た。妖怪鵺はその一つではないかな。 術師には賀茂氏が多かった。安倍晴明のライバルとされる芦屋道満は播磨の出と云われ、播磨には賀茂郡と呼ばれる地名がある。安倍晴明の師匠もまた賀茂氏だった。斑鳩一族も、賀茂小角が修行した宝光寺の系譜の可能性がある。遺伝的術師と云う訳だ。文庫瑠璃の祖父の出身地も伊豆半島の賀茂郡にあり、この二系統の血統を引くシグマの少女達は、やはり遺伝的な術師にあたる。 遺伝的術師とは、言うなれば式だ。式神ーーー 安倍晴明が呪術に使用した、護法、或いは権属で、様々な用途に用いられ使役された手下の如き者だ。 安倍晴明自体も遺伝的術師であり、その子孫は土御門(ツチグモ)を名乗り今でも各地に生き残っている。 私達は、その遺伝的術師ーー安倍晴明の子孫を探しているのよ。 何の為にーーー? 今回は、パンデミックを乗り越える為にーーー 神仏はあるのか? その前に、テレパシーはあるのか。このテーマを議論したい。超心理学におけるユングの調査結果は、「テレパシーはある」と云う結論だった。他人が見ているESPカードの図柄を、隣の席に座る人物が当てる事は可能だそうである。 個個人の脳がテレパシーで接続されると、個個人の脳に宿る無意識がデバイスの役割を果たし、それらのネットワークが、あたかも、「神仏の実在するが如く虚像」に、思える事もあるかもしれない。例えば八百万の神々だーーー。互いに干渉し合い、神話を築く幾千もの「在る者」達。それらは人々の数だけ存在すると云うーーーまさに八百万の神々なのだ。 「千代子さん、応答願います」 千代子は、インターネットで云う所の所謂サーバーだ、シグマの少女達全員と接続されている。 「ゴキブリオヤジとミミズ親父がそっちに向かったわ、気を付けて」 「こちら梶浦、月歌さんね、あなた1人で大丈夫なの?」 「ゴキブリオヤジがくしゃみばかりしてました。奴は感染者かも」 「菫ちゃん達に伝えておくわ。あ、月歌さんの車が見えて来た」 「きゃああああ」 「今の悲鳴は、菫ちゃん!?」 「呼ばれて飛び出てババババアアアン!」 「ゴキブリオヤジ?!月歌さんのコスをしてるなんて!!」 「いい歳コイタオヤジがアイドルのコスして恥ずかしくないのお?!」 「煩い!説教なんて食らわんわああ!!」 自動車のドアが開くと、ミミズの内臓が蠢きながら溢れ出た。 ミミズの内臓から白い粘液が吹き出て、梶浦先生に浴びせられた。 梶浦先生が危ない~! 菫と灯が梶浦先生を担いで逃げる。 猿に担がれて川を渡る昼寝中の人物の様に。 牙を剥き、それを追い掛けるミミズの内臓。 ミミズの牙が菫を掠り、手の甲を引き裂いた。 「あにすんのよ!骨が見えちゃったじゃない!」 小指の付け根から、白い物が覗いている。骨だ。 骨が露出した素手に何かを握った。 螢石ね!! 菫と灯が月歌に倣って自分もポシェットから螢石を取り出す! 三つの螢石から視線(ルート)を伸ばし、放射能を一点に集中する。 シュバッとオレンジ光が、ミミズの内臓を焼いた。 「あぎゃあああああーーーーー」 ミミズ親父の身体が溶解して行く。 担いでいた梶浦先生を下ろすと、千代子さんが言った。 「良くやったわ、シグマのみんな、ここまで出来れば伊豆半島に行っても安心ね」 「伊豆半島?」 「文庫さんの先祖の土地よーーー」 私達は安倍晴明の子孫を探していた。パンデミックを乗り越える為にね。そして、そのA島に伝わる財宝を発見した。あなた達、遺伝的術師の事よ。次は本物の財宝、金塊を探しに行きましょうーーー 鵺払い祭ーーそれは、古奈地方に伝わる鵺の伝説に基づく疫病の蔓延を鎮めるお祭りである。疫病は鵺がもたらすとされ、その鵺に扮した舞手を、頼政に扮した舞手が弓で射る振りをして退治するのだ。 あの古奈から見えるA崎の屋敷、彼処に今年引っ越して来た少年が弓今年の鵺祭の舞手だそうだーーー 祭会場で、そんな話しを耳にした。 ーーーはい、祭会場で目撃しました。尻尾のある有尾人です。はい角が有ら人もです。 屋敷の少年が、スマホで頻りに報告しているのは……角が有ら人、恐らく菫の事だろう。粒子を操る斑鳩一族は、指先から爪の如く粒子を伸ばす事が出来る様に、頭部の中央から、球状の頭部の最端部までの軸に粒子を固定すると角の如くなる。 ーーーどうせ呪術庁の使いだろう。殺れ。 命令された少年は螢石を取り出すと、菫の頭部に向けてオレンジ光を放った。脳を焼かれ卒倒する菫。しかし、超振動する粒子に活性された脳のハルク細胞が再生、瞬時に蘇生した。 少年の放った螢火(オレンジ光)は、菫の目から頭部に入り脳に達した。その際に眼球も焼いたが、元来無痛症の斑鳩一族の菫にとって、その程度の痛みは脳内にエンドルフィンを分泌しただけだった。 エンドルフィンの分泌に、菫のテンションは真骨頂となった。 「あははははははははは」 菫も石を取り出し、螢火でA崎を凪ぎ払う。屋敷が火を噴く。 「残念だが、僕の再生細胞は200度まで耐えられる。そんな攻撃は通用しないーーー」 少年は、そう言って螢火で反撃した。祭会場も炎に包まれる。 「ご免なさい、こちらこそ、そんな攻撃効かないわ。あなたの体表を覆う粒子を両目から吸収出来るの。吸収した粒子は再生細胞の活性化に転用可能よ」
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