火星への降下

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『秒速八百メートルの減速完了。火星大気上層まで七分三十秒』  画面に映る火星の大地が近づいて来る。 『秒速一.八キロ。大気圏突入開始』  ここから恐怖の八分が始まる。地球の百分の一の大気濃度の火星だが、大気圏突入では空力加熱で機体温度が急激に上昇していく。 『一分二十秒経過、機外温度二千二百度』  機体の周りは真っ赤なプラズマが輝いている。 『四分、高度十一キロ、秒速四二〇メートル。パラシュート展開』  プラズマの輝きが無くなり上部カメラにパラシュートが展開されるのが映る。 『四分二十秒、高度八キロ、秒速一六〇メートル。耐熱シールド分離。対地レーダ起動、エターナルクレパス視認、S字減速開始』  下方カメラが南極の氷に在る巨大なクレパスを映した。それに向けて機体がロール旋回を始める。 『五分五十秒、高度一キロ、秒速八九メートル。パラシュート分離、PDI減速開始』  メインエンジンが点火され、PDI(動力降下)が開始される。
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