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〖話したい事があるの〗
沙世理が達郎の家を出ていった日から2週間程が経ったある日、全く連絡が無かった沙世理からそう電話がかかってきた。
この声の主は本当に沙世理なのだろうかと、頭でぼんやりと思いながら、達郎は沙世理の質問に忠実に返答をする。「じゃぁ、土曜日にまた連絡するわ」と沙世理は言い、電話を切った。
今日は水曜日で約束した土曜日まであと2日もある。
達郎は繋がっていないスマートフォンを持ったまま、ソファーに座る。沙世理の話したい事など、安易に予想ができる。この2週間に一切連絡がないことが何よりもソレを達郎に予感させている。この2日間、いや、あるいはそれ以上今よりも倍の苦痛を受ける可能性があることはほぼ間違いないだろう。
ため息をついて、テーブルの上へスマートフォンを置き、ソファーに寝転がる。
達郎はこの2週間全くやる気が起きず、ただ仕事をして、ただアルコールを摂取して、ただ生きていた。生きる意味などない。目を閉じれば、沙世理を無意識に探してしまい、眠ることが出来ない。そんな自身に嫌気がさす。最後に食事をしたのは何時だろうか。思い出せない。
周りからも分かる程、憔悴しきっていた。
この日、 久しぶりに聞いた沙世理の声でさえも活力とはならず、達郎自身に生きているという感覚は得られなかった。
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