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「えっと...俺、ずっと考えてきて、やっぱり明智さんのことすごい好きだなって思ったんです」
「...っ、...おう、...」
「だから、正式にお付き合いしていただけたらなって...」
伊丹はそれだけ言うと気怠げな目元を緩ませて、さらに言葉を続けた。
「俺、自分に自信もなくて口下手で、人より努力する以外なにも誇れるところなんてないですけど、こんな俺で良ければ今後ともよろしくお願いします」
そう言って伊丹は頭を下げて、ゆっくりと手を差し出してくる。
その言葉は明智が欲しくて堪らなかったもので、感激のあまり唇が震えた。
差し出された手を優しく握り、明智はそのままその手を引く。
そんな行動は予期していなかった伊丹はそのまま明智の方に倒れ込む形になるので、明智はそれをしっかりと受け止めた。
「...っと、...明智さん?」
「嬉しすぎて、言葉になんねぇ...」
「はは、そんなこと言われると俺照れちゃいますよ」
「存分に照れとけ」
お互い抱きしめ合ったまま、背中越しにそんな会話をし、少しすれば体を離して視線を合わせる。
「...何で、いきなりオッケーしてくれたんだよ..」
「はは、...烏滸がましい話ですけど、今日はっきり自覚しました。明智さんには俺だけのこと見てて欲しいなって、たしかに思ったんです。俺は明智さんのことそれだけ好きで、もうそれは認めざるを得ないじゃないですか」
「...ちくしょう...くそ愛おしいじゃねぇか」
「そういうぶっきらぼうなとこ含めて、俺は明智さんのこと大好きです」
そう言って穏やかに笑う伊丹が堪らなく好きで、その想いがやっと今日繋がった。
その底知れぬ達成感と幸福感を、明智は静かに噛み締める。
「伊丹、」
「はい」
そして真っ直ぐと伊丹の目を見つめたまま、小さくその名前を呼んだ。
伊丹はその先の言葉を待つように、小さく頷く。
「...好きだ、大好きだ。絶対に幸せにするし、後悔させねぇから、俺とずっと一緒にいてくれ」
「それは...どうしても、ですか?」
「...どうしても、に決まってんだろ」
「あはは...じゃあ俺も。どうしても明智さんと一緒にいたいです」
「...しょうがねぇな」
そう言って二人で笑い合って、いつもとは決定的に違うはずなのに、いつもと同じような穏やかな雰囲気にどことなく安心を覚えた。
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