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この桜は何年、ここに植えられているのだろうか。毎年こんな光景が繰り返されて、きっと辟易(へきえき)としているに違いない。
散った花びらを春風が巻き上げる。
その先に僕と同じ窮屈な制服を着た、ひとりの女子生徒が立っていた。同じ制服だけど、知らない顔だ。
彼女はスマホを持つことも、誰かとなれ合うこともなく、ただ桜の木を見上げて、髪をかき上げていた。
僕と同じことをしているというのに、彼女は何故か生き生きとしている。
「ねえ!」
ずっと見つめていた僕に気づいて、その子は言った。
「同じクラスの子でしょ?」
ショートカットの髪に、朱鷺色(ときいろ)の頬を緩ませてほほ笑む。
「うん。3組だよ」
「やっぱり! 私、雨野コハク。岐阜県の小学校からきたの」
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