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ボクは、長尾さんたちがボクらから遠ざかるのをただながめていた。昨日はあの中に自分もいたのに、今日は外からながめることしかできない。
「そのうち、ねこと言えばごはんねこになるさ。あ、さとるにはあそびねこだったな」
ううーん、と高士はひと仕事終えたみたいに体をのばした。
「うん。いろんな遊びができるんだよ。けど、その中から一つだけしか選べなくて、オセロにしたんだけど、強すぎて勝てなかったんだ」
話せる相手がいる。
ひとりぼっちではないことにボクは安心した。
「ロボットだから頭を使う勝負は勝てるわけないさ」
高士はボクのかたをポンとたたくと、教室をでていこうとした。
「もうすぐ先生来るよ」
ボクは「やっぱりロボットなんだね」と返そうとしていたのをやめて、高士を呼び止めた。
あと五分もすればチャイムがなるし、担任はたいてい一分前にやってくる。それに、ボクはひとりになりたくない。
「少しでもきたえたいんだ」
高士はろうかを走りだした。ボクの足がひっぱられるようにあとを追いかける。
ボクといてほしい。ひとりにしないでほしい。
「ろうかは、走ったら、ダメだよ」
走りながら声をしぼりだしたけど、高士はふりかえることなく階段をかけおりて、げた箱へと向かった。
ボクも運動ぐつに手をのばしたときには、高士の姿が見えなくなっている。
くつをはくのに立ち止まる。ボクの息が落ちついて、ふと疑問がわいてきた。
……高士はいったい外でなにをするんだろう。ひとりで。しかも、きたえるって、どういうことだろう。
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