悪魔のように美麗な執事に恋に堕ちてしまった私は、悪役令嬢となって婚約者をヒロインに差し出すことにいたしました

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 そして、今……全てを吸い込んでしまいそうな深く暗いリチャードの瞳を見つめていると、私の心は彼に囚われてしまうのです。 「……目覚めの、口付けを」  催眠にかかっているかのように、唇がそう告げていました。 「フッ……畏まりました」    リチャードの美麗な顔が寄せられ、唇に温かく柔らかな感触が伝わります。彼の舌でねっとりと唇の輪郭をなぞられ、全身が粟立ちます。 「ンンッ!!」 「可愛いですね……」  背中が浮き上がり、下半身の中心が熱く疼きます。 「口を開けて頂けますか。そう、お上手ですよ……ビアンカお嬢様」  リチャードの舌が口内に入り込み、予想もつかぬその動きに翻弄されます。 「ンッ……ハァッ、ハァッ……ッグ!!」  唇が離れると、銀糸が引き合いました。ペロリと唇を舐め、リチャードが艶やかな笑みを浮かべました。 「それではお嬢様、お目覚めの紅茶を」  リチャードがティーカップに指を絡ませて口に含み、私に唇を寄せます。冷めかけた紅茶が流し込まれ、芳醇な香りが口いっぱいに広がります。それは、まるで媚薬のように全身を火照らせます。 「ングッ!」  紅茶を飲み干すと、リチャードがトレイへと手を伸ばしました。宝石のように美しく瑞々しい葡萄をもぎ取り、粒を人差し指と親指で摘み、見せびらかすように唇に挟みます。  唇が重なると、彼の舌で押し込まれます。 「噛んでください……」  リチャードの舌を噛まないように、そっと葡萄に歯を立てると、たっぷりの果汁が滴ります。ジュルジュルと音を立て、私の愛蜜ごと飲み込まれていきます。 「ッッぁ……ハァッ」 「あぁ、蜜が零れ落ちてしまいましたね」  唇の端に零れた蜜を、リチャードの舌が舐めとります。  あぁ、こんな淫らな交わり……赦されるはずなど、ありませんのに。  そう頭では思うのに、拒絶することが出来ないのです。
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