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学校の門の前でリチャードが車の後部座席の扉を開け、優美に見送ります。
「ビアンカお嬢様、行ってらっしゃいませ。
どうぞ、お気をつけて」
「えぇ、行って参りますわ」
皆様の視線が、リチャードに集中しているのを感じます。これほどの美形ですもの、当然ですわ。
歩き出すと、背後から声をかけられました。
「ビアンカ様、ご機嫌よう」
「ニーナ嬢、ご機嫌よう」
振り返って微笑むと、ニーナ嬢がキラキラした瞳で見つめてきます。
「あぁ、相変わらずビアンカ様の執事、美しくて凛としていて羨ましいですわ。さすがビザンヌ男爵令嬢、執事ですら美形ですのね。
あんな美麗な執事がビアンカ様の側にいたら、アンソニー様は気が気じゃありませんわね」
今朝の秘事が思い出され、心臓が飛び出しそうになりました。
「ニーナ嬢、何を仰ってるの。執事と何かあるはずなど、ないでしょう」
「そ、そうですわよね。私なら、心惹かれてしまいますが、ビアンカ様に限ってありえませんわよね」
「そ、そうですわ……」
私は、この学園を卒業したらアンソニー様の元へと嫁ぐ身。
執事であるリチャードに心を動かされるなど……あっては、ならないことなのです。
ましてや、今朝のような淫らな行為など……
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