悪魔のように美麗な執事に恋に堕ちてしまった私は、悪役令嬢となって婚約者をヒロインに差し出すことにいたしました

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 授業を終え、いつものようにアンソニー様と教室を出て歩きます。 「この時期に転入生が入ってくるだなんて、思いませんでしたわ」 「あぁ、ハナのことかい。ちょっと変わってるけど、いい子だね」 「えぇ、そうですわね」  そんな話をしながら門の前まで辿り着くと、車が停まっていました。 「ビアンカお嬢様、おかえりなさいませ」  リチャードが軽くお辞儀してから、アンソニー様に目線を向けます。 「アンソニー様もご同乗されますか」 「いや、僕は迎えの車が来るから大丈夫だ」 「では……」  リチャードが流し目を送り、車の後部座席の扉を開けます。 「お嬢様、どうぞ」 「ありがとう」  悪いことをしているわけではないのに……なぜか、動揺してしまいます。それは、アンソニー様に対してなのか、リチャードに対してなのか、自分でも分かりません。  今までは車は運転手がついていましたが、リチャードが執事となってからは彼が運転をするようになりました。  後部座席に座り、息を吐くと、リチャードが前を向いて運転しながら尋ねました。   「本日の学校はいかがでしたか?」 「えぇ、いつもと変わりなく……あっ、転入生が入りましたわ。見た目は少し変わっていらっしゃるんですけど、笑顔が素敵で可愛らしいお方でしたわ。アンソニー様の隣の席になられましたのよ」  リチャードがハンドルを切ります。 「そうですか。ビアンカお嬢様、ご心配ではないですか?」 「なぜ?」 「もし、アンソニー様がその方に心変わりされたら、と……」
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