悪魔のように美麗な執事に恋に堕ちてしまった私は、悪役令嬢となって婚約者をヒロインに差し出すことにいたしました

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 リチャードが私の頬を大きな掌で包みました。 「契約を進める中で、たったひとつ誤算がありました」 「誤算?」  小さく首を傾げると、リチャードが妖艶な瞳で私を見つめ、軽く口づけをしました。 「ただの道具にしか過ぎなかったはずの貴女を、手に入れたいと思ってしまったことです」 「それ、で……監獄へと向かう私が乗っている護送車を乗っ取り、魔窟へと連れ込んだのですか」 「えぇ」  そう答えたリチャードを、切なく見上げました。 「そして、私を……『極上の餌』を、食らうのですね……」    このベッドは、祭壇の代わり。  せめてもの情けとして、リチャードは慣れ親しんだ私の部屋を再現し、そこで逝かせてくれることにしたのですね。    そのことだけでも、感謝しなくては…… 「フッ。フフッ……」  リチャードが笑い出し、私はますます切ない気持ちになり、胸が締め付けられました。 「どうぞ、愚かな女だと笑ってください」 「えぇ、愚かですね……貴女は」
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