悪魔のように美麗な執事に恋に堕ちてしまった私は、悪役令嬢となって婚約者をヒロインに差し出すことにいたしました

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 リチャードが私の心の問いに答えました。 「召喚され、契約を交わした悪魔は、それを(たが)えることは赦されません。それをすれば、私は滅されてしまいます。  ですから……なにがあろうとも、貴女とアンソニーを婚約破棄させ、ハナとアンソニーを結び付けなければなりませんでした」  悪魔とは、自由気ままに人を騙し、翻弄し、陥れるものだと思っていた私は、それを聞いて驚きました。  それほどまでに、契約には強い力があるのですね……  それだけ強力で悪魔をも滅する力を持つ契約であるなら、悪魔を召喚し、契約を結ばせた人間側にも大きな犠牲があったはず。  私は乾いた喉を上下させました。 「ハナ嬢は、その代償として何を差し出したのですか?」  彼女の、寿命……でしょうか。  リチャードの視線が、私を貫きました。 「貴女の、魂です」 「わた、しの……」  では、ハナ嬢は悪魔であるリチャードを使って、私を殺すつもりでしたのね。  そうとも知らず、私はハナ嬢に毒薬を入れるのをあれほど躊躇っていた……彼女がその後、生き返るのだと知っていてさえも。  転校してからずっと……ずっと、ハナ嬢は、待ち続けていたのですね。私がリチャードに唆されて、ハナ嬢に復讐と称して毒薬を飲ませる日が来ることを。そうして私を陥れ、監獄へと送り、悪魔に私の魂を売り渡そうとしていたのですね。  あぁ……本当の悪魔は、ハナ嬢かもしれません。
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