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リチャードが私に同意するように、フッと微笑みました。
「私は契約を履行するため、貴女がハナに毒薬を飲ませるように仕向け、アンソニーが婚約破棄をするよう注意深く見張りました。
アンソニーが婚約破棄し、ハナが彼と両想いとなれば或いは契約完了となるのではないかと密かに期待し、警察が来た時点で彼女を生き返らせてみたのですが……ハナがビアンカを陥れるまで満足しないのだと、彼女が偽の毒薬の小瓶を突きつけた際に悟りました。
ですから、私がハナを裏切ったと嗅ぎつけられないためにも、私は貴女が警察に捕まろうと、留置所という劣悪な環境で鞭を打たれようと、助け出すにはいかなかったのです。
そして、裁判の日を迎え、ようやく貴女を救い出せる日が来ました。ここで貴女が実刑判決を受ければ、ハナとの契約が完了することになるのです。私は、嬉しさを隠しきれませんでした。決定的な証拠となる毒薬が水であったことから、死刑になることはないだろうと踏んでいました。判決は、私の望んでいた通りとなりました」
そこで思い出しました。リチャードが証言台に立った時に、判決が下された時に、私に微笑んでいたことを。
あの時は、私を蔑んでいるのだと、愚かな女だと嗤っているのだと思っていましたが……違ったのですね。
「そう、だったのですか……」
そう呟くと、リチャードが私を包み込むように抱き締めました。
「ここに来てから、貴女ばかりが質問し、私が答えていますので、私からも質問をさせてください」
「ぇ? えぇ……」
戸惑いながら頷くと、顎をクイと持ち上げられました。
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