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リチャードのルビーのように煌く瞳に、私が映し出されます。吸い込まれそうに美しく、妖しい光を放っています。
「私から裏切られ、絶望していたというのに……警察にも、婚約者であったアンソニーにも、ハナにも、愛する貴女の両親にさえも、なぜ貴女は、私からの指示だったと打ち明けなかったのですか?
人間とは、自分が一番可愛く、他人を蹴落としてまで幸せになろうとする欲深い生き物のはず。それなのに、貴女はちっとも自分の身を守ろうとしませんでした。憎しみに窶すのではなく、ただ深い悲しみを背負いながら、貴女は私への愛を貫き通しました。
恨んで当然なのに、私に出会えたことに感謝までしていた。どうしてそんな心情になれるのですか。あれほどの苦しみや痛みを負ってもなお、なぜ清らかな魂でいられるのですか」
尋ねるというよりも、切々とリチャードは私に訴え、身を震わせました。
いつも余裕で微笑み、何事にも動じることのないリチャードの動揺した姿を見て、彼への愛おしい気持ちが高まります。
「私にも……分かりません。
ただ……私はリチャード、貴方を愛しただけ。自分のことよりも、深く、深く愛しただけなのです」
リチャードが「クッ」と喉の奥で呻いて俯きました。
「ほん、とに……貴女には、狂わされます。
この私が、魂を食らうよりも、大切に愛したいと思うなど……」
「リチャ……」
彼の名を呼ぼうとすると、唇に人差し指を当てられました。
「貴女に、私の本当の名を教えましょう」
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