悪魔のように美麗な執事に恋に堕ちてしまった私は、悪役令嬢となって婚約者をヒロインに差し出すことにいたしました

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 本当の、名……  唇が燃えるように熱くなります。 「さぁ、呼んでください。  私の名は……ベリアル」  人差し指が外され、燃えるような唇で彼の本当の名を呼びます。 「ベリアル……」  本当の名前を私に呼ばれた途端、彼の頭部には山羊の角が、背中からは漆黒の翼が、臀部からは先の尖った尻尾が生えてきました。肌は黒味を帯び、目付きが鋭く、瞳は炎のように真っ赤に燃えていて、漆黒のオーラを纏っているようでした。  これ、が……リチャード。  いえ、ベリアルの本当の姿、なのですね。  ベリアルは私を見下ろしました。 「私が、恐ろしいですか?」  即答出来ませんでした。  確かに、今まで私が見てきたリチャードとは違います。明らかに人間とは異なる容姿、圧倒的な闇のオーラに震えが走ります。
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