悪魔のように美麗な執事に恋に堕ちてしまった私は、悪役令嬢となって婚約者をヒロインに差し出すことにいたしました

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「恐ろしくない、とは言えません……」  正直な気持ちを吐露しました。 「人間にとって悪魔とはそういうものですから、仕方ありませんね」  自嘲した笑みを浮かべるベリアルの手を取りました。人間の肌とは違い、鎧のように硬く冷たい感触が伝わります。 「けれど、貴方が貴方であることに変わりはありません。  私に本当の名を明かし、本来の姿を見せてくださったことには、重大な意味があるのでしょう?」  ベリアルが真っ赤な瞳を揺らし、私の手の甲にそっと口付けを落としました。 「本来、悪魔は自分の本当の名を人間には明かしません。最大の弱みを晒すことになるからです。  私は、貴女への愛が本物である証を示したかったのです。  そして、願わくば……私の本来の姿を受け入れてもらいたい、と」  そこまでして、貴方は私のことを……愛してくださっているのですね。  しっかりと、彼の手を握り締めました。 「たとえ貴方が人間にとって恐ろしく不吉な存在だったとしても、私にとって貴方、ベリアルは、恋焦がれる愛おしい人です。  どうか、御心のままに私を愛してください。どのような愛し方であろうとも、私は全て受け入れます」  悪魔に、この身を捧げることへの恐怖と不安を、完全に打ち消すことは出来ません。ですが、それよりも彼自身を愛し、愛されたいという想いの方が勝っていました。
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