179人が本棚に入れています
本棚に追加
「恐ろしくない、とは言えません……」
正直な気持ちを吐露しました。
「人間にとって悪魔とはそういうものですから、仕方ありませんね」
自嘲した笑みを浮かべるベリアルの手を取りました。人間の肌とは違い、鎧のように硬く冷たい感触が伝わります。
「けれど、貴方が貴方であることに変わりはありません。
私に本当の名を明かし、本来の姿を見せてくださったことには、重大な意味があるのでしょう?」
ベリアルが真っ赤な瞳を揺らし、私の手の甲にそっと口付けを落としました。
「本来、悪魔は自分の本当の名を人間には明かしません。最大の弱みを晒すことになるからです。
私は、貴女への愛が本物である証を示したかったのです。
そして、願わくば……私の本来の姿を受け入れてもらいたい、と」
そこまでして、貴方は私のことを……愛してくださっているのですね。
しっかりと、彼の手を握り締めました。
「たとえ貴方が人間にとって恐ろしく不吉な存在だったとしても、私にとって貴方、ベリアルは、恋焦がれる愛おしい人です。
どうか、御心のままに私を愛してください。どのような愛し方であろうとも、私は全て受け入れます」
悪魔に、この身を捧げることへの恐怖と不安を、完全に打ち消すことは出来ません。ですが、それよりも彼自身を愛し、愛されたいという想いの方が勝っていました。
最初のコメントを投稿しよう!