悪魔のように美麗な執事に恋に堕ちてしまった私は、悪役令嬢となって婚約者をヒロインに差し出すことにいたしました

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 その瞬間、フワッと躰が浮き上がるような感覚になり、やがてゆっくりと沈み込むと包まれました。  なんて……優しくて、柔らかくて、幸せな心地なのでしょう。  瞳を閉じたまま快感の海を揺蕩っていると、暫くして耳の遠くから呼びかける声が聞こえてきました。 「ビアンカ。目を、覚ましていただけますか」  でも、私……とても、気持ちよくて。  このまま、眠ってしまいたいんです……  夢の中で気怠く答えると、再び声がしました。 「ですが……貴女に、お見せしたいものがあるのですよ」  私に、見せたいもの……ですか?  抗い難い夢の世界から抜け出そうとすると、手が差し伸べられました。とても温かくて、滑らかな肌触りの手……  そこまで感じて、ハッと目を開けました。  だってそれは……先ほど手に取ったベリアルの手とは、違うものだったからです。
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