悪魔のように美麗な執事に恋に堕ちてしまった私は、悪役令嬢となって婚約者をヒロインに差し出すことにいたしました

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「ベリアル!?」  慌てて呼びかけると、すぐ傍で声がしました。 「ここにいますよ」  そう言われてベリアルを見上げた私は、驚きの声を上げました。 「ベリアル、これは一体……!?」  そこにいたのは、先ほどまで私が見ていた彼とは違っていました。  コウモリのような黒い翼は美しい黒羽の翼となり、山羊の角も尻尾も消えています。黒く鱗のように硬かった肌は人間のように滑らかになっており、何より印象的だった赤い瞳が深い碧色に変わっています。  ベリアルが自分自身の姿をゆっくり眺め、それから私を深く見つめました。 「いったい何が起こったのか、私自身も驚いているところです。このような姿に戻るのは……何千年ぶりでしょうか」 「何千年ぶりって……」  呆気にとられる私に、ベリアルが説明しました。 「私は、神の手によってルシファーに次いで創造された天使で、天上にあってはミカエルよりも尊き位階にいました。私は神の使者でしたが、神の似象を拒否したことにより地獄を管理するよう言い渡され、堕天使に落とされたのです。  私の心は荒み、数々の悪事に手を染めるようになりました。そうして月日を過ごしているうちに魔窟にすっかり染まり、気づけば美しかった黒羽の翼はコウモリのような翼に変化し、頭部からは角が生え、臀部からは尻尾が生え、完全な悪魔の姿になっていたのです。  私自身、自分が以前にこのような姿だったことを忘れていました」
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