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廃部寸前の死ぬ部。
その運命に抗うための、顧問教諭探し。
「俺は無理だぞ」
岸先生は聞いてもないのに断りを入れてきた。
実際、駄目元で掛け持ちを打診しようとは思っていたが、聞いてないのに断られると出鼻を挫かれた気分だ。
「あの、じゃあ……ほ、他に………」
「他の先生方も、何かしらの部活の顧問になってるしなぁ」
「…………うぅ」
にべもない答えに、暫し黙考する。
小夜啼高校にある公認部活動の数は百。
そして、教員の人数も百人。校長と教頭も合わせてだ。
その内の一人が亡くなって、一つの部活動の顧問が足りなくなった形であった。
補充人員でも来ない限りは、やはり誰かに掛け持ちしてもらうしか。
と、私はふと気付いた。
「…………ぁ……」
「ああ、そう言えば新任の新田先生がいらっしゃったな」
「………そ…………」
「ほら、そこの、天井を向いて鼻毛を抜いてる、新しい先生だよ。志仁田先生の後任で、今日が初出勤だ。授業は明日からだけどな」
「……ゃ………」
「当然、部活の顧問もやってないし、頼んでみたらどうだ」
「……ぁ…」
「折角だから今呼ぶか。すみません、新田先生ぇ!」
そうとなれば話は早い。
私は早速、首を傾げて近付いてくる新田先生に、顧問就任の打診をすることにした。
「…っ…」
「新田先生! こいつ、二年の鳶尾って言うんですけどね。部活の顧問を探してまして、今顧問やってないのが新田先生だけなんですよ。お願いできませんか?」
「おおっ、顧問スか? いっスよ、暇だったんで。何部スか?」
「……ぅ……」
「死ぬ部ですよ。先生、ご経験は?」
「おっ、へへっ、マジスか! 実は高校時代、死ぬ部でインターハイ出たことあるんスよ!」
「それはちょうど良かった! これは運命かも知れませんね!」
「そスね! 鳶尾さん? だっけ? 宜しくなー!」
「………ぁ……ぇ…………はぃ………」
話が早いのは助かる。
私は新しい顧問に承諾と感謝の意を告げた。
§ § §
「へ!? 部員一人だけ!?」
「……ぁ」
「まあ死ぬ部はなぁ、タイミングによってはそんなもんだよなー」
「…………はぃ……」
「なら、まずは部員集めだな!! へへっ、センセーに任せとけ!」
「……ぉ……おねがい、しますぅ……」
打てば響くようなやり取りで、私は火急の問題について、新田先生の協力を取り付けた。
聞けば、先生は現役時代にも部員集めが得意だったそうで、団体戦前の欠員募集でも活躍していたという。
昔から部員不足は、死ぬ部にとっては正に死活問題だったらしい。
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