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無事に金一封を手に入れた穂村は、早速近くの茶屋で団子を購入。満面の笑みを浮かべながらそれを頬張っていた。そこへ、一人の男が近寄ってきた。長い髪の毛を後ろで結び、腰には刀を差している。どうやら武士のようだ。何故かこちらに熱い視線を向けてくるので、穂村は思わずたじろいでしまう。
(やべ、さっきまで現代の格好でウロウロしてたから、怪しまれているのかも)
穂村が目を右往左往させている間に、その武士は彼の前に立つと、その肩をがっしり掴んだ。
「お主!」
「はっ、はい!」
「某に仕えぬか?」
「…………はい?」
穂村は一瞬、武士の言っている意味が分からなかった。
「えっと、もう一度言っていただけますか?」
「ん?だーかーらー、某に仕えぬかと言っているのだ。先ほど、お主が興行で矢を射る所を見てな。いやぁ~実に見事であった!その腕を見込んで、ぜひ俺の弓衆に入ってほしい。丁度、弓の腕が立つ者を探しておったのだ。頼む!この通りだ!」
そう言うと武士は、いきなり頭を下げた。身分の差が激しいこの時代。武士が民に頭を下げるなど、通常はあり得ない。それほど、彼は穂村を取り立てたいと言うことだ。
(ここまでされちゃあ、断るわけにはいかないな。それに、男子たるもの、一度は武士として戦ってみたいもの。せっかく戦国時代に来たんだ。とことんやってやるぜ!どうせ行くとこないし!)
「わっかりました!どこの家の方かはご存じありませんが、この綱田 穂村、あなたのために弓矢を取りましょう!」
「おぉ、これはありがたい!よろしく頼むぞ、穂村!」
二人は固く握手を交わした。
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