第二話 兵(つわもの)との出会い

2/3
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
 無事に金一封を手に入れた穂村は、早速近くの茶屋で団子を購入。満面の笑みを浮かべながらそれを頬張っていた。そこへ、一人の男が近寄ってきた。長い髪の毛を後ろで結び、腰には刀を差している。どうやら武士のようだ。何故かこちらに熱い視線を向けてくるので、穂村は思わずたじろいでしまう。 (やべ、さっきまで現代の格好でウロウロしてたから、怪しまれているのかも) 穂村が目を右往左往させている間に、その武士は彼の前に立つと、その肩をがっしり掴んだ。 「お主!」 「はっ、はい!」 「(それがし)に仕えぬか?」 「…………はい?」  穂村は一瞬、武士の言っている意味が分からなかった。 「えっと、もう一度言っていただけますか?」 「ん?だーかーらー、某に仕えぬかと言っているのだ。先ほど、お主が興行で矢を射る所を見てな。いやぁ~実に見事であった!その腕を見込んで、ぜひ俺の弓衆に入ってほしい。丁度、弓の腕が立つ者を探しておったのだ。頼む!この通りだ!」 そう言うと武士は、いきなり頭を下げた。身分の差が激しいこの時代。武士が民に頭を下げるなど、通常はあり得ない。それほど、彼は穂村を取り立てたいと言うことだ。 (ここまでされちゃあ、断るわけにはいかないな。それに、男子たるもの、一度は武士として戦ってみたいもの。せっかく戦国時代に来たんだ。とことんやってやるぜ!どうせ行くとこないし!) 「わっかりました!どこの家の方かはご存じありませんが、この綱田 穂村、あなたのために弓矢を取りましょう!」 「おぉ、これはありがたい!よろしく頼むぞ、穂村!」  二人は固く握手を交わした。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!