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(おかしい……)
綱田 穂村は、今自分のいる場所の景色に、違和感を覚えていた。
(まず、俺は高校の修学旅行で大坂に来ていて、ダチと大阪城公園で遊んでいたはず)
そう思いながら、彼はふと前を見る。確かに、大阪城は建っている。だが、色が見慣れているものと明らかに違う。彼が見た大阪城は緑と白を基調としたものだったが、今見ているそれは、壁が黒い。しかも、あちこちに黄金の飾りがあり、正直言ってかなり“派手”だ。
(そしてもう一つ。ここは公園じゃない。大きな街だ)
辺りを見回す。どこを向いても店が建ち並び、多くの人や物で溢れ返っている。笑い声や軽快な笛の音が飛び交い、活気に満ちている。よく見ると、人々は皆時代劇のように着物を着て、草履を履いていた。
「マジでどうなってんだよ、コレ。ドッキリか何かか?」
穂村が訳も分からずキョロキョロしていると、突然肩を叩かれた。慌てて振り替えると、一人の男がこちらを見つめていた。
「どうした兄ちゃん、そんなにキョロキョロして。大坂は初めてかい?」
「え?えぇ、まぁ」
何と答えていいか分からず、適当に返す穂村。その反応を見た男は、嬉しそうに口を大きく明けて笑った。
「そうかいそうかい!どうりで呆けているわけだ!どうだい、大坂は。すげぇ所だろ?何しろ“太閤殿下”のお膝下だからな。ガーハッハッ!」
(は?太閤殿下?)
男の言ったその言葉が、穂村は引っ掛かった。太閤殿下と言えば、彼の有名な武将、「豊臣秀吉」のことである。
(あれ……これってもしかして……)
嫌な予感がした。現代人が突如、時代劇風の場所に飛ばされるシチュエーションと言えば、これしかない。歴史が好きで、歴史を題材とした作品を愛読している穂村は、すぐにピンときた。
「戦国時代に、タイムスリップしちまったぁあああああああああああああああああ?!」
これが彼の、戦国人生の始まりであった。
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