私とあの子のジャジーナイト2

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私とあの子のジャジーナイト2

 みどり先生は、私のことを「どうせ、あんたはあの子のかわりだから。気に入られなきゃ捨てられるよ」なんて言うの。    ねえ、ねえジャジー。  あの子ってだれなのかな。  私、パパにもママにもはなしていないよ。  ジャジーだけにしか、話していないんだよ。  そこまで言うと、私はぐっと、からだにちからを込めました。  そうじゃないと、なんだか大声で泣いてしまいそうだったからです。  パパもママも、まだ寝ているし、お仕事やおうちのことでいつもばたばた、ぴりぴり、いらいらしているので、あまり困らせたくないのです。  みどり先生は、うそが上手で、パパとママの前だといい先生なんだ。  私にはよけいなこと言ったら、ももぐみから追い出すよと耳をひっぱるの。  みんな、みどり先生がこわくて、私のことはしらんふりなの。  ジャジー、ねえ、助けて。  朝が来ないように、できないかしら。  みどり先生に、つねられたり、いじめられたりしないように。  もし、できなかったら……いけないことだって、わかっているけど、わかっているけれど……  みどり先生が、いなくなったり、しないかしら。  私がぼそぼそ、こそこそとちいさな声で言うと、また、かさかさと音がして、足元に折り紙でできた花が落ちました。  拾い上げると、私の好きな水色でした。  みどり先生は「水色が好きなんて、女の子なのに変な子。だから嫌い」と、私のハンカチを捨てたのに、ジャジーはちゃんとちゃんと、私をわかってくれていました。    嬉しくて、嬉しくて、私は折り紙でできた花をぎゅっと、胸に押し付けました。  そのときでした。  ドアの向こうで、ジャジーが「わかった」と言いました。    初めて聞いた、ジャジーの声でした。  とても優しくて、きれいで、やわらかい声でした。  朝になって、ママがあわてて私を起こしました。  目をあけた私に、ママは「幼稚園はしばらくお休みしましょうね」と言いました。  そして、私をぎゅっと、抱きしめると「ごめんなさい」とあやまったのです。  みどり先生が、私だけにいやなことをしていたことが、わかったのだそうです。  幼稚園は大騒ぎで、パパが会社を休んで、話を聞きに行ってくれることになり、おばあちゃんもすごくおどろいて、私のことはママにおねがいして、パパといっしょに幼稚園へとんでいったそうです。  ママは、なにもしらなかったことを、すごく悲しそうにしていました。
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