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私とあの子のジャジーナイト1
真夜中になると、私の部屋のドアをとんとん、とんとんと二回ノックしてくる友達がやってきます。
名前はジャジー。顔は見たことがないけれど、とてもいい子です。
私は眠い目をこすって、パパとママに気づかれないようにゆっくりと起きて、ジャジーと同じようにとんとん、とんとんとドアをノックします。
すると、ドアを開けてもいないのに足元にかさかさ、かさりと、折り紙でできた花が落ちてくるのです。
ジャジーは、折り紙がとても上手です。
私みたいに、幼稚園のみどり先生に「折り紙ができない子は、なにをしてもだめ」と笑われるような、へたくそではありません。
だから、こっそりと折り紙の宿題が出た時は、ジャジーにお願いするのです。
みどり先生は、「まあまあね」なんて言って、ふんと鼻をならして私の腕をこっそりつねります。
おなじ、ももぐみの子は知りません。
みどり先生はこっそり、いやなことをするのがとても上手だからです。
まるで、ジャジーの折り紙みたいに。
今日は黄色のかわいい、タンポポみたいなお花です。緑色の葉っぱもついていて、私はそれを月の光にかざして、きれいだなあって見とれるのです。
そうだ、お礼を忘れちゃいけません。
私はママとめったに話さないし、パパにはママの悪口ばかり言っているけれど、機嫌がいいときは大きな金平糖をくれるおばあちゃんにもらった、ジャジーが好きな薄緑色の、金平糖だけをよりわけて、とっておいてあります。
はい、ジャジーお礼だよ。いつもありがとう。
ドア越しに言って、ティッシュで包んだ薄緑色の金平糖を差し出します。
そうすると、ジャジーの白くて細くて、ひんやりとした手がドアをすりぬけ、だまって金平糖を受け取るのです。
うふふ、と嬉しそうな笑い声がドアの向こうから聞こえます。
廊下には、私が金賞をもらって、みどり先生がいつまでも返してくれなくて、ゆきなりくんの名前にしようとしたお花畑の絵が飾ってあります。
なんで、みどり先生は私にいやなことばかりするのかしら。
ねえジャジー、私、もう疲れちゃった。
本当はね、幼稚園に行くのが嫌なの。
ひとりごとをするように、ジャジーに話します。
すりぬけた、ひんやりと冷たいジャジーの手が、私の頬を優しく、するりとなでてくれました。
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