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「私は!美味しい物が食べたいんだよ!!」
そう言った私を横目で見た亜絵里は抑揚の無い声で言った。
「別にいいじゃない。培養肉や培養卵だって美味しいし。」
「それは亜絵里が本当に美味しい物を食べたことが無いからでしょ!」
そう言った瞬間、空気にヒビが入ったように亜絵里のオーラが硬くなった。
「なに?金持ちマウント取るわけ?」
「そ、そうじゃなくて…」
「おかしいでしょ!そうじゃなかったら何なのよ!?」
急に抑揚のついた亜絵里の声に私はクスクスと笑い出す。
「何よ、急に。気持ち悪いわね。」
「いやっハハッ、急に元気になったなぁってハハハッ。」
「ちょっと。私怒ってるのよ?なに笑ってるのよ。」
何だか笑いがじわじわと込み上げてきて笑いが止まらない。
これがいわゆる『じわる』って奴か、
なんて言ったら亜絵里に古っ、と言われてしまった。
と、文章にするとこんなに平和に見える景色も、一フェンス越えれば銃がバンバン撃たれる無法地帯。
その隣を私はクスクス笑いながらスクールに通っている訳である。
そのため、イラついた銃持ちがこちらに銃を向けてくることもないこともない。
まぁ、それ普通に違法なんだけど。しかし、そういう物騒な人を将来取り締まる為に、私たちは訓練されているのである。
「今日のカフェテリアでのAランチの飲み物、りんごジュースだってさ。」
「え!?嘘、もうそんな時期!?」
亜絵里が目を見開く。私達のスクールでは毎年一年生がりんごを栽培し、それを素手で潰すという行事が行われる。そこでりんごが潰せないと、もう一度りんごを育てて貰う事になる。まぁ、簡単に言うと留年だ。
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