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「水族館、久しぶりだったから癒されちゃったな。クラゲって育てられるのかな。うちでも育ててみようかな」
閉館時間になった水族館を後にして駐車場まで歩く道すがら、とりとめのない話をしたり、時々笑い合いながら歩いた。
でもその話の内容なんかよりも、サラの様子の違和感に気が行ってしまっていた。
クラゲの水槽を見た後のサラは無理をして明るく振る舞っているようだった。
言葉の途切れた瞬間には、とても切なく悲しげな表情を見せる。
たしか昔もこんなことがあった。
緊張したり思い悩んでいるときに限って、お喋りになるようなところがある。
これは何かの前触れかもしれない。
「ありがとうね、カズヤ。この場所に連れてきてくれて。クラゲ、すごく綺麗だった~」
「あぁ、うん」
笑顔のサラの意識は、俺の身体を通り抜けて、その先のずっと遠くへと行ってしまっているようだった。
笑顔の裏に本心を隠しながら、それを見せないようにしている。
俺が必死に捕まえようとすればするほど、サラはするりと腕の中からすり抜けていってしまうんだ。
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