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気付けば、サラの手を取り、強く握り締めていた。
ようやく掴むことができたサラの手の温もりも、また消えてしまうなんて――。
「カズヤ、どうしたの」
「俺さ、これからもずっと⋯⋯サラのそばにいたいって本気で思ってて。それって中途半端な気持ちじゃなくて、本心なんだ。伝わるかな。って⋯⋯俺、何言ってんだろ」
胸が燃え盛る火に激しく焼かれるような、焦燥感に襲われる。
言葉にできないもどかしさに、心の芯がジリジリと痛む。
だがサラは取り乱す俺を見つめたまま、戸惑いの表情を作って顔を引き攣らせた。
――俺は自惚れていた。
サラは俺の助けを待っているのだと勝手に思い込んでいた。
自分がサラを救う救世主かなんかのように。
選ばれし者だと勘違いして。
心のどこかで、サラに会うことができれば、全てが自然と上手く運ぶのではないかという甘さがあった。
その自惚れが心から姿を消した途端に、大きな恐れが襲ってくる。
何の確信も権限もないのに、この手でサラの人生を悪い方へ変えてしまっているかもしれないのに。
助けられる確証もないし、ただチャンスを貰えたというだけなのに。
策もなく無闇に足掻いてばかりいては、前に進む手応えすらなくたって当然だ。
それでもサラを救いたいと思う気持ちだけでここに来た。
たとえ恐怖に押しつぶされそうになっても、もう逃げないと決めたんだ。
無駄に終わったとしても全て試したいし、伝えられる言葉は全て伝えよう。
どんな形になっても、後悔だけは絶対に残さないように。
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