111人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんね、サラ」
「うんん」
「急にそんなこと言われても困るよね」
カズヤは痛々しく微笑んで、強く握っていた手を離した。
私は困って、また目を逸らす。
そのとき、彼の車のナンバープレートに視線が止まる。
あれ――。
「わ」ナンバーってレンタカー?
そういえば、前の車もそうだった。
なぜレンタカーなのか引っ掛かるけど、今はそれどころではない。
気付けば辺りはすっかり陽が落ち、暗くなってしまっていた。
彼の言葉の本当の真意が分からない。
言葉の表の意味だけではないような。
それに、この関係をどうしたいのだろう。
先程の苦しみの表情とは、全く別人のように冷静さを取り戻したカズヤが呟く。
「せっかくここまで来たから、シーキャンドルのイルミネーションを見に行かない」
「⋯⋯シーキャンドル?」
「江ノ島にある展望灯台が新しく建て替えられたんだって」
江ノ島展望灯台。名前だけは知っている。
でも登ったことはなかった。
遠足の行きのバスの中から見えた江ノ島とそこに立つ灯台の説明を、バスガイドさんがしてくれていたのは何となく覚えている。
最初のコメントを投稿しよう!