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帰りの高速道路の車の中で、カズヤと何を話したのか全くと言っていいほど覚えていなかった。
カズヤの話に上手く相槌が打てていたのかすらも分からないくらいに、大きな心のざわめきの波が寄せては返すを繰り返していた。
いつの間にか降り始めた雨が、車のスピードが上がるにつれてより激しくアスファルトを叩きつけ、その飛沫が辺りを白く霞ませている。
鼓動と同じ速さで動き続けるワイパーと、フロントガラスに打ち付ける大粒の雨を、ぼんやり見つめるしかできなかった。
ゲリラ豪雨の激しさに、ざわめく心の音も流されてしまえばいいのに。
お願いだから、静まってよ――。
やっぱり好きになってはいけない。
でも嫌いにもなれない。
海中と砂浜をユラユラと行ったり来たりする波はどこへ行くのだろう。
自分も気付かぬうちに海岸に上がった波は蒸発して空に上り、いつかまた海に帰るのか。
でも波は、砂にはなれない。
だから私も、私以外にはなれないのか。
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