第5章 江ノ島 (4回目)

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「今月、もう一度だけ会えないかな。サラの顔を少しだけでも見たいから」  カズヤが耳元で囁く。  たしか今月の18日と19日の土日はお休みだった。久しぶりに取れた連休。  今までみたいに曖昧な気持ちを持ったまま、彼に流されて会うのはやめよう。  ちゃんと決めて「彼に流される」のだ。  同じ流されるにしても大きな違い。  彼を信じて委ねるのだから。 「大丈夫。会いた⋯⋯」   言葉の途中で彼の顔が近付いて、長く、長く唇を重ねた。  変われない最低な自分も、辛い現実も、全て忘れてキスに浸った。  カズヤの唇を通して伝わってくる気持ちが優しくて温かくて。そして痛くて苦しかった。  世界中に私たちだけしかいないみたいに、お互いの唇を求め合った。   熱く、熱く――。   さっきよりも少し弱くなった窓ガラスを打つ雨の音が、静寂の中に響く。  雨が止む前に、この気持ちごと私を連れ去って欲しかった。  
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