第5章 江ノ島 (4回目)

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*** 《 1998年12月 》   学校の遠足なんて退屈なだけだって、それまでの俺はずっと思っていた。  だって見学ができる場所は先に決まってるから自由には見られないし、弁当を食べたらすぐに集合~って言われて、またバスに乗ってあっさりと学校に戻るだけ。  時間が少ない遠足って、何のためにあるんだろうって本気で思ってた。  先生は「集団行動を学ぶため」とか言うんだろうけど、何かの型にはめられてしまうみたいでどうも好きになれなかった。   しかも今回は水族館。  クラスの女子たちみたいに、黄色い声を上げて「キャー、可愛い~!」なんて言うはずもないし。  それならどこかの広い公園に行って、走り回ってる方がよっぽどいい。みんなでサッカーでもしてりゃあいいんだから。   遠足の楽しみと言えば母さんの弁当だけ。  普段の給食とは違って開放的な場所で食べる弁当はいつもの10倍増しでうまい。  まぁ、母さんが作ってくれる弁当は、それでなくてもうまいけどさ。 
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