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「どうした和也。これみよがしにため息なんかついて」
コーヒーの入った紙コップを手に持った誠が、俺の隣に腰をおろす。
吉川 誠。
歳も価値観も近いし、お互いに気を遣わなくて済む貴重な存在。
「さっき、完全に無意識でため息してたわ」
「疲れてるんだよ。ほら、ため息って、幸せが逃げるとかよく言うけど、違うらしい。自律神経のバランスを保つために無意識にため息を出して、自然な呼吸法を身体がしようとしてるんだって。だから必要なものらしい。それにしてもため息が出るってことは、なんか原因があるんだろ」
「聞いてくれる。俺ってどうしてこうも不器用なんだろうって」
「なんだそりゃ。今更じゃん」
ふふっと誠が笑う。
誠はよくこんな言い方をするけど、いつもメンバーのことを気遣っていて、見えないところで対応してくれたりする。
誠の観察眼は相当なものだから、何でもお見通しだろうな。
みんなそれぞれの個性があって誰一人欠けることなんて考えられないけど、グループ貢献度で言えば、誠は特に欠かせない人物だとひそかに俺は思っている。
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