第5章 江ノ島 (4回目)

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「おい、三島! なんで俺の取るんだよ」 「だってタケが美味いって言うから~」 「まだ向こうに新しいのがあるだろ」 「一口ぐらい味見させてくれたっていいじゃん。本当にタケはケチだよなぁ~。しょうがないから、こっちのをいただくとするか」 「えっ、なにそれ~! めっちゃ大きいじゃん。竹原の顔より大きいんじゃない。俺もそれ欲しい~」  三島に続いて仙堂(せんどう)もたこせんべいを手に取る。 「丸焼きたこせんべい」はその名の通り、タコが丸々入っていて、そのビジュアルはなかなかインパクトがあった。  伏見(ふしみ)はそんなメンバーの傍らに座りながら、一人黙々と本を読んでいる。   これが俺らのいつもの距離感。  好きなことを好き好きにやっていて、でも気になることがあると寄ってきて、時々一緒に共有する。そして各々の意志を尊重し合う。   そんな中で誠はスマートフォンでニュースを見ながら、周りに聞こえるくらいのボリュームで独り言を言っていた。  これもまたいつもの光景である。  
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