第6章 距離 (5回目)

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* 「えー、今回取材させて頂くのは、『 未来で輝くための、毎日の自分磨き 』という特集について、いくつかお聞かせいただければと思っています。岸本さんは日頃から、何か意識をして生活されていますか」   つい先程から、事務所の会議室で取材が始まった。いかにもやり手そうな女性記者が、矢継ぎ早に質問をしてくる。  取材が早く終わるなら、こちらとしても有難い。  「いや、これといって決めていることはありません。でも後悔しないように行動する意識は常にしています。結果を考えず、自分ができることをまずは全力でやってみる。やる前にあれこれと考え過ぎてやらないのはもったいないし、結果がしっかりとした形にならなくても、チャレンジしたことが必ず自分の核に残るんじゃないかと思うんです」  「なるほど~、自分の未来の為に常に意識をしておくということですね。いつもポジティブな、岸本さんらしいお考えですね。では質問を変えますが、もしもタイムスリップのような現象が実現可能な世の中だとしたら、ご自身の未来を見てみたいですか。それとも知りたくはないですか」  「タイムスリップ⋯⋯。いや、僕は⋯⋯未来は知りたくないです。自分が努力を積み重ねた結果がそのまま日々のモチベーションになっているので、それがすでに分かってしまっている未来なんて楽しくないですから。でも過去ならば、どうしても悔やまれることがあったとしたら戻るかもしれません」 
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