第6章 距離 (5回目)

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「どうしても悔やまれることとは、例えば」 「例えば⋯⋯大切な人の命を救うとか」  「なるほど。守れずに後悔した命を過去に戻って守る様なことですね。まるで映画のヒーローみたいじゃないですか! でもよくあるSFの映画だと、タイムスリップをした人が過去を変えてしまうと新たにパラレルワールドが出現してしまうこともありますよね。それに新しく変わった世界がさらに悪い状況に変わってしまう可能性があったとしても、大切な人のためなら岸本さんは過去へ戻りますか」  「はい。戻ると思います。それでも自分が何もしなかったという後悔だけはしたくないので」  *  長かった取材がようやく終わり、慌ててスマートフォンを覗くと15時になっていた。   うわっ、ヤバい――。   その場でサラへ電話を掛けてみたが、呼び出し音は鳴り続けているけれど出ない。  やはりサラとは繋がらないのか。  ひとまず電話を切り、サラの自宅へと急いで向かうことにした。  繋がらない電話が余計に二人の距離を遠く感じさせた。  
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