第6章 距離 (5回目)

8/20
前へ
/229ページ
次へ
*** 《 2010年12月18日 》   やだ。私、寝ちゃったんだ。   昨日仕事から自宅に戻ってきたのは、いつものように日付が変わってからだった。  でも普段と違ったのは、身体が芯まで冷え込むような夜で、少し寒気がしたから早めに休んだのにまだ身体が鉛のように怠かった。  温かいスープを冷えた身体に流し込んでからリビングのソファーでテレビを見ていたら、ウトウトとして知らないうちにしっかりと寝てしまったらしい。  気を張っていても、身体は正直。  今晩あたり高熱が出ないといいけど。  さっきまで、小学生の和也くんと水飲み場ですれ違いをした日の夢を見ていた。  その様子はすごくリアルで、回想なのか、夢なのかも曖昧なくらいで。  夢の中の二人は本当に楽しそうだった。  懐かしいなぁ――。  「あっそうだ、時間。嘘、どうしよう⋯⋯」  部屋の時計はすでに16時を指している。  慌てて近くに置いてあった携帯電話の画面を確認してみたけど、彼からの着信は来ていなかった。   14時の約束だったのに。  寝ていて、気付かなかったのかな。   カズヤに電話してみよう。  あぁ、そうだった。  彼の電話番号を聞くのを忘れたんだ。  もう待つほかないのか――。 
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加