第6章 距離 (5回目)

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*  和也くんの思い出を辿っていたら、気が付けば21時を過ぎてしまっていた。  結局、カズヤが来ることはなかった――。   事故に遭っていなければいいけど。  きっと、カズヤに初めて会ったときみたいに、また何かの事情があったんだ。  きっと、そう。  そうだと思い込みたかった。  カズヤとの関係の結論がまだ自分の中で出ないまま、今日を迎えてしまった。  会う時にどんな顔をすればいいのだろう。  いつまでもカズヤの気持ちを待たせておくわけにはいかないし。  だから今日、何かの理由で自宅(うち)に来れなかったカズヤのことが心配だったけど、少しホッとしているようなところも心の片隅にあった。   昼間に見た夢のような「すれ違い」の状況は、何かの暗示なのだろうか。  今日、カズヤに会うべきではないと。  それか私の心の迷いを象徴しているのか。
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