第1章 誕生日 (1回目)

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「適当なこと言って、ごめん」 「でも、嬉しいです。そんなこと、誰にも言われたことがなかったから。実は、私、幼い頃から、児童文学の作家になりたくて、今も作品を書き続けているんです。でも、思うようにはいかなくて」 「書き続けているんだね。そっか⋯⋯」  小学生のときに出会った、「星の王子さま」という本に、大きな影響を受けた。  泣き虫で内気な性格だった私に、この世には目に見えるものだけではなく、もっと広い世界があることや、自分自身を信じることや、挑戦することが大事だと教えてくれた。  だからいつか、子どもたちの世界や夢を広げてあげられる側の人間になりたかった。 「どうしても児童書に携わりたくて、出版社に就職したんですが、配属先は畑違いだし、毎日仕事が忙しくて、執筆する時間も取れなくて。だからせめて、児童書の部署に異動させてもらえるように、今の場所で自分のできることを精一杯頑張ろうと思っていて」 「偉いじゃない。夢を追いかけていて」 「偉くなんてないです。失敗ばかりだし、空回りをして、周りに迷惑をかけて」 「それでもいつか、サラちゃんが書いた本を、たくさんの子供たちに、読んでもらえる日が来るといいね」 「そうなるといいんですが⋯⋯」
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