111人が本棚に入れています
本棚に追加
「⋯⋯やだよ。この前が最後だなんて」
抑えていた感情が堰を切ったように涙となり、ポロポロと溢れ出す。
会いたいよ。カズヤに――。
ひとしきり泣いた涙が乾いた頃には、胸の思いが確信に変わっていた。
カーテンと窓を一気に開けて、新鮮な空気の匂いを嗅ぐように深呼吸をして吸い込む。
酷く重かった身体もだいぶ楽になったし、抜けるように澄み渡る青空も惜しいから、少し散歩にでも出掛けようか。
空に向かって大きく伸びをする。
すっかり身体は良くなったみたい。
散歩がてら、神保町の行きつけの古書店へ寄った。大好きな店主のおじさんと少しだけどお話もできたし、以前から欲しかった本にも出逢えた。
軽い散歩のつもりが、太陽はとっくに落ちてしまった。だいぶ遅くなっちゃった。
自宅の鍵を差し込む。
最近鍵の入りが悪いんだよね。
油を差しておかないと――。
扉の裏側にあるポストの取り出し口を開けると、チラシに混じって入っていた紙切れのようなものが、はらりと足元に落ちる。
コンビニのレシート?
ゴミを入れられたのかな。やだなぁ。
そのレシートを裏返すと、何やら小さな文字が書いてある。
最初のコメントを投稿しよう!