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第7章 真実 (6.7回目)
***
《 2011年2月12日 》
フロントガラスの向こうの景色は、地元の雰囲気にもよく似ている。
建物の感じだろうか。
それとも空気感だろうか。
そのマンションは、大通りから一本入ったところにある。
それなのに都心の喧騒はあまり感じられず、ゆったりとした郊外の住宅街の空気感が辺りに流れている。
少し離れたところからでも見つけやすい、横浜の赤レンガ倉庫のような色をした、15階建てのマンション。
サラはそこの7階に住んでいる。
前の道路に車を止めて、約束の時間まで車内で待っていた。
ちょっと早く来すぎたか――。
暖房をかけた車内でハンドルにもたれかかっていると一気に眠気が襲ってくる。
昨日は収録の終わり時間が3時間も押して、自宅に戻れたのは空が明るくなり始めた頃だった。
少しでも仮眠を取っておけば良かった。
身体が妙に気だるく、重たい。
だが何をおいても早くサラに会いたくて、熱いシャワーを浴びただけてすぐに車を飛ばした。年末はすれ違いで会えなかったし、江ノ島からは2ヶ月が過ぎようとしていた。
ウトウトとしている目を優しく起こすように、スマートフォンの着信音が鳴った。
その優しい音から、なんとなく誰の電話かが分かるような気がした。
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