110人が本棚に入れています
本棚に追加
「⋯⋯もしもし、和也?」
「おはよ」
「良かった⋯⋯。やっと繋がった。あれから何度も掛けたの。でも全然電話が繋がらなくて。今日も会えなかったらどうしようって」
ため息混じりの声が潤んている。
俺の方とサラ方とでは、やはり電話は繋がらないらしい。
「電話のこともだけど、年末の約束も本当にごめん。俺、日付を勘違いしてて」
「勘違いだったんだ。良かった。何かあったんじゃないかと思って心配だったから。和也、今どこにいるの」
「すぐ近くにいるよ」
「もうすぐ着く場所にいる?」
「実はさ、ずいぶん前からマンションの下にいるんだよね。ちょっと早く着きすぎちゃったから下で待ってたんだ」
「えっ⋯⋯」
電話の向こうでガタガタっと大きな扉の音がして、それから走る息遣いが聴こえた。
「あっ、和也⋯⋯」
「えっ?」
「上見て」
最初のコメントを投稿しよう!