110人が本棚に入れています
本棚に追加
身体を乗り出してフロントガラス越しにマンションを見上げると、7階の廊下から身体を乗り出したサラが見えたが、すぐにその姿が見えなくなる。
俺は車を降りて改めて頭上を見てみたが、もうそこには誰の姿もなかった。
部屋に一度入ったのだろうか。
それから徐々に大きくなるサンダルのパタパタという音がして、そちらに目を向けると、マンションのエントランスにサラの姿が見えた。
サラ――。
しばらくぶりの姿。眩しい笑顔。
両手を大きく広げて待ち構え、今まさに駆け寄ってくるサラを、思いっ切り腕に抱き止める。サラの全てを受け止めるように。
まだ息を切らして上下するサラの胸の鼓動が、俺の身体の隅々にまで伝わってくる。
心地の良いサラの体温。
シャンプーの甘い香り。
俺に預けてくれた全部を余すことなく感じたくて、抱き締める腕に力を入れる。
どんなことがあったって、俺はこの笑顔を絶対に守りたい――。
最初のコメントを投稿しよう!