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岸本さんにはそう言ったけれど、本当は作家になる夢も、結婚の約束をした男の子に会いたいという願いも、心に予防線を張って、必要以上に期待をするのをやめた。
夢も、願いも、叶わないと気付いたときに、大きなショックを受けずに済むように。
そんなに、私は強くない。
弱く見せないように、無理をしてるだけ。
逆風に立ち向かう気力も、体力も、もうほとんど、残っていなかった。
ただ、お守り程度に、心にその思いを持っておくだけなら、傷付かずに済む。
そうやって自分に言い訳をしながら、これまでなんとか心を保ってきたんだ。
人に夢の話をするのは、小学生ぶりだった。
結婚の約束をした男の子に、私が書いた小説を見せると、「すげぇ面白いじゃん」と、いつも大袈裟に褒めてくれた。
それが嬉しくて、たくさん書いて、たくさん彼に読んでもらっていた。
あの日々があるから、今の私がある。
――初恋の相手。
とても幼く、淡い淡い恋心。
とても甘くて、とても苦かった思い出は、今もまだ、私の胸の中で、お守りのようにちゃんと存在している。
彼は今ごろ、何をしているのだろう。
そして、私の夢を、今も覚えてくれていたりするのだろうか。
会いたいな。もう一度、彼に。
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