第7章 真実 (6.7回目)

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 この時代に来るようになってからは特に、何度も頭をよぎることがある。  人生は選択の連続だとよく言うけれど、これまで自分が選んできた道以外の選択肢の別世界が、無数に存在するのではないかと。  今、俺がいるこの場所は、本来選ばなかった道の先に存在している。  この世界が実際に存在するとしたら、人間が想像できる限りの世界が、幾つも絡み合いながら、実在しているのではないだろうか。  人間は、一日に3万5千回の意思決定をしていると言われているらしい。  それぞれの決定が、まるで葉脈のように張り巡らされていると仮定すれば、その一つ一つの選択肢が誰かと重なり合う事実も、奇跡と言える。  もしも、限りない選択肢が俺たちに用意されているとしたら、あの大震災がない世界がどこかに存在してもおかしくはない。  これまでに俺とサラが、少しずつ違う選択肢をしていたならば、そこにはまた違う運命が待っていたに違いない。  この場所に二人が存在している奇跡と、この先の選択肢の重要性を改めて噛み締める。  その選択肢の一つとして、サラと温泉旅行に行くことを決めた。  限られた時間の中で、できるだけサラのことが知りたかったというのが、一番の理由。  非日常を感じると人は開放的になるらしい。  だから、「フェアリーパーク」や「江ノ島」や「温泉旅行」なら、サラの本心を垣間見れるんじゃないかと期待していた。
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