第7章 真実 (6.7回目)

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「そんなに見つめたら、恥ずかしいよ」   サラは照れくさそうに、俺に背を向けた。 「今、すごく幸せだなって、思ってさ」 「うん。私も。今日はこのまま、和也と一緒にいたいな⋯⋯」   いつもは内気で臆病で、心の内をあまり見せないサラが、素直に甘えて来てくれたことが、心底嬉しかった。  大袈裟でも何でもなく、奇跡だと思った。  溢れんばかりの喜びを、俺は心の中で静かに噛み締めていた。 ――だが、決して忘れてはいけないルールがある。日付が変わる前までに、あのバーへ戻らなければならない。  『 必ず日をまたがず、日付が変わる前にお戻り下さい。戻ってこられなかった場合は――』  ルールを破れば、ペナルティがあることも、マスターから聞いている。  でもどうしても、今夜はこのまま、サラのそばにいたい。  たとえペナルティになったとしても、構わないと思った。  だから、大浴場を先に出て、俺は一人でフロントへと向かい、日帰りから宿泊へと変更をしていた。  「和也、どうしたの」 「うんん。このままずっと、サラの顔が見ていたいなって、思ってさ。ねぇ、サラ。今晩は、ここに泊まっていかない」 「えっ、でも。和也、仕事は」 「明日はオフだから。俺は初めから、そのつもりでいたよ」 「それなら、まだ一緒にいられるんだね」 「そうだよ」 「嬉しい⋯⋯」   サラをもう一度、強く抱き締める。  この腕の中に、しっかりと捕まえておかなければ、パッと姿を消してしまいそうで。  存在を確認するように、手に力を入れる。  もう二度と、俺を残して、どこか遠くへ行かないでよ。お願いだから。サラ――。  
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