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《 2011年2月13日 》
鳥のさえずりが、微かに聴こえる。
明るさを感じた瞼をゆっくりと開くと、まだ寝息を立てている和也の体温を感じた。
良かった。夢じゃない。
愛しい寝顔の頬に、軽くキスをする。
ガバッ!
突然、強く身体が引き寄せられる。
まだ和也の目は閉じられたままだったが、口元にうっすらと笑みを浮かべていた。
「 もう! 寝たフリしてたのね、和也」
いくら身体をよじって離れようとしても、筋肉質な和也の腕の力が強くて、全くかなわない。力を入れるその腕に、細い血管が浮かび上がる。
「絶対に離さないから」
「じゃあもういいや。ここままで」
「一生離さなくてもいいんだな~」
朝日の気配が漂うベッドの中で、こんなじゃれ合いをするのだって、どこかくすぐったくて、思わずニヤけてしまう。
「せっかくだから、部屋の露天風呂で、汗でも流して来ようかな。サラも一緒に入る?」
「私は、いいや⋯⋯」
「なんだ、残念」
ベッドから見える庭は、またその姿を変えたように、朝の光が木々の隙間を縫って、地面に落ちながらチカチカと輝いている。
ゆっくりと身体を起こした和也は、露天風呂の方へ向かって行った。
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