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うそだ。和也なの?
でも、22歳って、言っていたし。
それなら、別人かもしれない。
「ねぇ~、サラ! せっかくだから、露天風呂、一緒に入ろうよ~」
お風呂から声を掛けた和也を、返事も出来ずに、呆然と見つめていた。
もしさっきテレビに映っていた人が和也なら、説明がつかないことがありすぎる。
いったい、どういうことなのだろう。
姿を隠していた不安感が、再び沸き起こる。
こんな近くにいる彼が、全く知らない人に見えるなんて――。
「ねぇ、和也。⋯⋯あなたは一体誰なの」
「えっ。サラ⋯⋯どうしたの」
「今ね⋯⋯テレビのニュースに、和也によく似てる人が映っていて⋯⋯昨日デビューが決まったグループとか、言ってて⋯⋯」
途切れ途切れの言葉しか出てこなかった。
怖くて、苦しくて――。
すぐに、切なく悲しそうな表情になった和也は、目を伏せて、口をきつく結んだ。
いや。いやだよ。
私にとっても、和也にとっても、とても重要で、知りたくない現実が突きつけられるの。
「ふぅ⋯⋯」
和也は大きく深呼吸をして、何かを決意したかのような目で、こちらを見つめた。
このとき、すぐに耳を塞げば、知りたくないことを、聞かずに済んだのだろうか。
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