第7章 真実 (6.7回目)

21/24
前へ
/229ページ
次へ
 うそだ。和也なの?  でも、22歳って、言っていたし。  それなら、別人かもしれない。 「ねぇ~、サラ! せっかくだから、露天風呂、一緒に入ろうよ~」  お風呂から声を掛けた和也を、返事も出来ずに、呆然と見つめていた。  もしさっきテレビに映っていた人が和也なら、説明がつかないことがありすぎる。  いったい、どういうことなのだろう。  姿を隠していた不安感が、再び沸き起こる。  こんな近くにいる彼が、全く知らない人に見えるなんて――。  「ねぇ、和也。⋯⋯あなたは一体誰なの」 「えっ。サラ⋯⋯どうしたの」 「今ね⋯⋯テレビのニュースに、和也によく似てる人が映っていて⋯⋯昨日デビューが決まったグループとか、言ってて⋯⋯」   途切れ途切れの言葉しか出てこなかった。  怖くて、苦しくて――。  すぐに、切なく悲しそうな表情になった和也は、目を伏せて、口をきつく結んだ。  いや。いやだよ。  私にとっても、和也にとっても、とても重要で、知りたくない現実が突きつけられるの。  「ふぅ⋯⋯」   和也は大きく深呼吸をして、何かを決意したかのような目で、こちらを見つめた。  このとき、すぐに耳を塞げば、知りたくないことを、聞かずに済んだのだろうか。  
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加