110人が本棚に入れています
本棚に追加
*
二人の周りに、重い沈黙が流れる。
目には見えない、分厚いフィルターが掛かったような、距離感が生まれていた。
不安げな表情で、こちらを見ているサラの前に、静かに腰を下ろす。
――どこから話せばいいか。
とうとう訪れてしまった。この瞬間が。
「ねぇ、サラ。俺の話の前に、これだけは、信じていて欲しい。俺にとって、何よりも大切なものは、サラだけだから。これから、どんな話を聞いたとしても、それだけは必ず分かっていて欲しい」
「⋯⋯分かった」
息をこらすように、サラはこちらを見つめ、俺の言葉を全て受け取ろうとしている。
いつかこんな日が来ることは想像していたけれど、現実は厳しいものだった。
なぜ、今なのだろう。運命とは残酷だ。
幸せの絶頂から、地獄へ落とされる気分。
喉の奥が締め付けられるように苦しくて、悪い夢の続きを見ているようだ。
この数ヶ月間に俺たちが積み上げたものが、一気に崩れ落ちてしまうかもしれない。
まずどこから話せば、サラに分かってもらえるだろうか。
身体により多くの空気を流し込んで、心を静めると、言葉を一つ一つ選ぶように、サラに向けて語り始めた。
最初のコメントを投稿しよう!