110人が本棚に入れています
本棚に追加
第8章 追憶 (9回目)
***
《 2020年9月24日 》
「お客様、やり残したことがありますね」
この言葉を、バー「FUTURO PASSATO」で聞いたのは、サラの葬儀から2ヶ月が過ぎた、ある日のことだった。
今思えば、何かに導かれていたのかもしれない。そうじゃなかったら、説明のつかない、にわかには信じがたい話すぎる。
遺影の笑顔を思い出しては、後悔ばかりしている自分にも、そろそろ疲れ始めていた。
四つ葉のクローバーを見つけていれば。
ポストに隠れなかったとしたら。
引越し後にサラに会いに行っていれば。
もしもそばにいられたら。
――サラを、俺が守ってあげていれば。
「タラレバ」ばかりを考えているばかりで、ただ、行動を起こさなかった自分を、慰める言い訳を探してるだけだってことも、心のどこかで分かっていた。
今更、考えたって仕方ないことを、何度も考え続けて、自己嫌悪の闇にはまる寸前だった。
サラの死もちゃんと受け入れられず、不安定な気持ちは宙を彷徨い続けたまま、終着点を完全に見失っていた。
最初のコメントを投稿しよう!