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初めは、彼のその言葉の意味が、よく分からなかった。
なぜ、そう思うのか。
俺の何に対して、その言葉を言っているのか。
「会いたかったのに、会えなかった人が、その心の中におられますね」
その一つ前の言葉を、まだ頭の中で反芻しているうちに、さらに俺の心の中を覗くような、次の言葉が掛けられる。
この男は、何を知っているのだろう。
誰にでも言っているのだろうか。
だから、どうだと言うのだ。
会いたいのに、会えなかった人。
脳裏に浮かぶサラの笑顔が色を濃くする。
「いや、もしも、そんな想いがあったとしても、やり直せるはずもないですから。この世のものは、絶えず変化を続けていて、同じ場所に留まれないのが、この世の常です」
「『 諸行無常 』の考えですね」
俺の緊張を解きほぐすように、バーテンがニコッと微笑みかける。
「では、やり直してみますか」
「えっ、どういうことですか」
「言葉の通りです」
「いや、やり直すって言っても⋯⋯」
いよいよ、ストレスと疲れで、相手の話が理解できないような、酒の飲み方をするようになってしまったか。
無様だ。情けない――。
酔いを覚ますように、自分の頬を軽く両手で叩いた。
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