第8章 追憶 (9回目)

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 これは、夢なのか。  それとも、降って湧いたチャンスか。  この話が本当だったとしたら、今よりも悪い未来になる危険もはらんでいるのか。  「あの、今の話を聞いていると、過去をやり直せたり、未来を見に行けたりすることは、僕にとってプラスなことばかりですよね。その代償というか⋯⋯リスクがあったりはしないんですか。たとえば、歳を取るスピードが、異様に早くなるとか」 「いいえ。そういったものは、全くございません。私がこのお話を提案させて頂く方には、一定の条件がございます。その条件は、こちらの事情により、ご説明する訳にはいきませんが」  真実か、そうでないかは、もうこの際、どうでもよかった。  どんなに足掻いても変えられない、サラを亡くした苦しみから脱却できるものを、心のどこかで求めていたから。  サラが生きている未来が、万に一つでもあるなら、そこに賭けてみたかった。  どんなことがあっても、この最低な状況よりも悪くなることはないんだから。  もう、俺に、失うものは何も無い。 
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