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ついさっきまで、車の窓の外が木々で溢れていたのに、辺りは空を削り取るような、都心の高層ビル群が建ち並ぶ景色へと、様変わりしていた。
バーの近くにある駐車場に、車を停める。
サラはこれから起きることを想像して、緊張しているのか、口数が少なくなっていた。
バーの重い扉を開いて、店へ入ると、電気が消されて、マスターも客もいなかった。
サラを連れて、あの大鏡の扉を通り抜けることに、多少気が引けていたから、マスターを探さずに、そっと店の奥へと向かう。
「和也。この鏡が、過去への入口?」
「そうだよ」
二人で、鏡と向かい合う。
鏡に映るサラの表情は張り詰めている。
「なんだか、怖い」
「大丈夫。俺が一緒なんだから」
「うん⋯⋯」
「じゃあ、いい。行き先を強く思い浮かべながら、階段の一番つき当たりまで進むんだ。1999年の3月25日だからね」
「⋯⋯分かった。手を握っててもいい?」
「もちろん」
サラの手を取り、しっかりと繋ぐ。
鏡の扉を静かに引くと、用心深く階段を降りて行った。二人の足音だけが響き渡る。
いつもと同じように見えてきた階段下の扉を、強く押して開いた。
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